鶴雅まろうど絵巻物 vol.48 2014年春号

タンチョウに魅せられて

タンチョウの傍らに暮らし、タンチョウととも呼吸をしている、そんな人が存在します。安藤 誠さん。 鶴居村に住んで28年、偶然にもタンチョウが餌を求めて集まるサンクチュアリのそばに活動の場を構えています。頭上をタンチョウが舞い、彼らの息遣いを感じられる距離感に心が躍ります。国内屈指のネイチャーガイドでありながら、写真家でもある安藤さんにタンチョウへの思いをうかがいました

タンチョウは「湿原の神」、その本来の姿を求めて

オーナーを務める宿「ヒッコリーウインド」で出迎えてくれた安藤さん。「クマさんのような」という形容詞がぴったりのあったかさを感じます。
「サンクチュアリに来るタンチョウも美しいですが、本来どこでどんなふうに暮らし眠っているか、興味がありませんか?」
にっこり笑うと目がさらに優しさを増します。安藤さんは道東の自然に生きている動物たちの姿を写真を通して見せてくれています。中でも、タンチョウはここでしか見られない特別な存在だと言います。
「タンチョウはアイヌ語でサルロンカムイ、『葦原にいる神=湿原の神』という意味なんです。タンチョウと湿原は一つ、湿原の中にいてこそのタンチョウなんです。今でも湿原の奥深く、彼らは生命を繋いでいるのです」

安藤さんが見せてくれた何枚かの写真。タンチョウが強い意志をもってその場に存在しているのが感じられます。耳を澄ませば、川のせせらぎ、広げる大きな羽、そして風に揺れる枝葉…それらの音が伝わって、一枚の写真が醸す臨場感に包み込まれるような感覚。それが安藤さんの写真の力です。
「この湿原、この自然が、タンチョウの棲む場所。水が湧き、流れ、土地を潤し生命を紡ぐ。動物もタンチョウもひたむきに生きている。
タンチョウが何故美しいか、何故私たちは惹かれるのか…。写真を通して何かのメッセージを伝えられたら…」そう言いながらも「自分のやっていることは自然の営みのなかでは僅かな時間」と笑います。

タンチョウがこのを選んだこと

安藤さんは、タンチョウの姿を通して広い目で自然を環境を思っています。自身のネイチャーガイドの原点であるアラスカに一年のうちの数ヶ月滞在し、自然との向き合い方を再認識してくると言います。
「タンチョウがこの地を選んだことが重要なんです。こうした素晴らしい自然と50年100年というスパンで自分たちがどう関わっていけるか。何が自分にできるのか、タンチョウを見ながらいつも考えさせられます」。
もうすぐ厳しい冬が終わります。寒さの中で輝いた命は、やがて新たな命を育むのです。「彼らが長い間続けて来た命の営みを、自分にできることで伝え、残していく。それがガイドとして写真家としての役目でもあると思っています。」
全国各地で開催される講演会であり「私塾」でもある「安藤誠の世界」。ライフワークにもなっています。タンチョウを見つめ、タンチョウと同じ視点で湿原の環境を見つめている安藤さんのまなざし。その優しさの意味がわかったような気がします。

真夜中のタンチョウ。マイナス10度を下回る気温の中、タンチョウを起こさぬよう気遣いながらシャッタ ーを押したという1枚。 川の流れが静かに聞こえてきそうだ。「絵画のような写真を撮りたい」と願う安藤 さんの思いが描かれている。

左/厳しい寒さの中に温かな光を感じながら、タンチョウも春を待っているのだろうか。
右/水墨画のようなモノトーンの美しさ、鏡のような水面がタンチョウの美しさを際立たせているようにも感じます。

親の後をついて行くヒナ。何か歌いながらピクニックに出かけるかのよう。

安藤 誠さん

安藤 誠さんウィルダネスロッジ・ヒッコリーウインドのオーナーであり、日本屈指のネイチャーガイド。この冬も世界のトップネイチャーカメラマンのガイドを勤めるなど、季節を問わずガイドのオファーが入る。全国を歩いて買い付けた陶器、自らデザイン・製作したハンドメイドアクセサリーなど、さまざまな才能が訪れる人を楽しませている。時にはギターでライブイベントに参加することも。タンチョウのように繊細でまっすぐで、でも自然の中で生き抜くたくましさと大らかさが、クマさんのような大きな優しさとなって出会う人を包んでくれるのかもしれない。北海道認定アウトドアガイド、ほか、講演活動などを全国で行っている。また各教育機関への講義など、多くの人に使える活動を積極的に行っている。

安藤さんの連絡先
ヒッコリーウィンド 鶴居村雪裡原野北14
TEL 0154-64-2956 携帯番号 080-6093-3650 / http://hickorywind.jp/blog/

松浦武四郎、前田正名に思いを馳せて阿寒の古道を歩く

その昔、蝦夷地を探訪した松浦武四郎、前田一歩園の創始者・前田正名、そしてアイヌの人々が歩いた道を時空を超えて辿り、先人達が感じたものを体感しよう…
そんなロマンあふれる「阿寒クラシックトレイル」が始動。市民団体・阿寒クラシックトレイル研究会が生まれ、新たな観光資源としても活用しようとさまざまな取り組みが行われています。同研究会のメンバー、郷右近好古さんにお話を伺いました。

かつて人、モノが行き交った道を時空を超えて再現

かつて蝦夷地と呼ばれた北海道を歩いた松浦武四郎、そして全国を行脚し阿寒湖畔に居を構え阿寒湖をはじめ道東の発展に尽力した前田正名が歩いたルートを数年前から調査・研究していました。現在の阿寒本町から阿寒湖までの鉄道跡、農道や林道が、二人が歩いたと想われるルートと一致する部分も多いことに着目。約60kmを「阿寒クラシックトレイル」と命名して、これまで地元の方々が参加できるイベントとして開催してきました。
古道をゆっくり歩き、自然やアイヌ文化を大切に見守ってきた二人は、どんな風景を見て何を感じたのか…。とても興味深いツアーの枠組みができつつあります。

のどかな風景から山へ、湖へと続く3つの「道」

全長およそ60kmのうち、半分を占めるのが「里の道」と呼ぶ田園風景が広がる道です。雄別炭鉱の鉄道跡や林道を雌阿寒岳を眺めながら歩くルートです。次に「川の道」は、山に入っていくようなイメージで、まりも国道〜阿寒川添いを進む10km程のコース。松浦武史郎が歩いた場所を追体験できるワイルドなルートです。
そして最も変化に富んだルートが「山湖の道」で、雌阿寒岳に登って阿寒湖を眼下に望み、阿寒カルデラの外輪から内側へと入ります。あまり知られていない絶景ポイントで休憩し、滝口の手前に降りてきて大島の近くから船に乗って湖を渡ります。武四郎も丸木船に乗ったのではないでしょうか。

「阿寒を歩きに行こう」。阿寒の旅の新しい理由。

アイヌコタン、湖、温泉…。これまで阿寒は湖畔に宿泊し、その滞在時間を楽しむスタイルが多かったように思います。「阿寒クラシックトレイル」は、阿寒湖畔に向かって歩きながら周囲の歴史、産業、暮らし、文化を学び、感じられる新しい観光のスタイルとも言えるでしょう。阿寒に行く理由が「歩きに…」。これまで阿寒に来た人も、これから来る人にも新しい阿寒湖への旅の理由となればいいですね。
今、ガイドプランを作成中で、地域ガイドも育成中です。阿寒の豊かな自然をじっくり時間をかけて楽しんでもらいたいと願っています。

あかん遊久の里 鶴雅 ・ あかん湖 鶴雅ウィングス阿寒湖に新しいステージが生まれます。

これまで「あかん湖鶴雅リゾートスパ 鶴雅ウィングス」が新たに趣を異にする二つのホテルに生まれ変わります。どんな楽しみがあるのか、どんな癒しがあるのか、永田義幸総支配人にお聞きました。
これまでたくさんのお客様にご利用いただいた鶴雅ウィングスをお客様の旅のスタイルに合わせてより快適な滞在をご提供するために、違ったコンセプトの空間を創ることとなりました。
鶴雅館・別館は「あかん遊久の里 鶴雅」として、和の趣とおもてなしの心に満ちた日本の旅館文化、その原点に立ち返ります。「鶴雅」に到着したその時から、お客様にとっての特別な時間が始まり、旅の物語が綴られます。私たちが大切にしたい温泉旅館の素晴らしさを味わっていただけるでしょう。
そして飛翔館は「あかん湖 鶴雅ウィングス」としてよりスタイリッシュな新しいスタイルの温泉旅館をご提案いたします。ご滞在の時間をたくさんの思い出で彩りたい、そんなちょっと欲張りな旅をご提供できることでしょう。北海道の豊かな食材を堪能していただけるビュッフェ、岩盤浴やエステなど心と身体を開放できる癒しの館となるでしょう。
大浴場や売店などの共有スペースはこれまで通りどちらの館もご利用いただけます。新しい鶴雅でたくさんの笑顔に出会えることを、スタッフ一同楽しみにしています。

あかん遊久の里 鶴雅 ・ あかん湖 鶴雅ウィングス 永田総支配人

大浴場もリニューアル工事をしています。

「鶴雅ウィングス」の一階和風大浴場「豊雅殿」と庭園露天風呂「鹿泉の湯」の改修工事を行っています。これまでにも増して安全で、どなたにも安心して阿寒湖温泉の素晴らしさを感じていただけるでしょう。また阿寒の自然のスケール感を大浴場でも感じていただけるよう、壁面に雄大な阿寒を描きました。
そして鶴雅館8階の展望大浴場「天の原」、空中露天風呂「天女の湯」も5月から6月にかけて改修工事を行います。阿寒の自然に抱かれるような雄大な景色と開放感をたっぷり味わっていただけるよう、より快適な大浴場へとリニューアルします。
今まで以上に楽しい大浴場と露天風呂が生まれます。どうぞご期待ください。

大浴場完成イメージ図

大浴場完成イメージ図

今年も[SoRa]の季節がやって来ます

冬の間、静かに眠っていたナチュラルオーベルジュ[SoRa]が屈斜路湖の雪解けと共に今年も営業を始めます。4月26日(土)にオープン[予定]お客様をお迎えする準備が整いました。
屈斜路湖の自然と、東北海道の美味しさを存分に味わってください。小さなオーベルジュでは、ご宿泊はもちろん、ランチやディナーのご予約も承ります。今年も皆様のお越しを[SoRa]でお待ちしております。

屈斜路湖 鶴雅オーベルジュ SoRa

屈斜路湖 鶴雅オーベルジュ ソラ / 川上郡弟子屈町屈斜路269 / Tel:015-484-2538
ランチタイム/11時30分〜14時(ラストオーダー13時30分) ティータイム/14時〜16時(ラストオーダー15時30分) ディナータイム[要予約]/18時〜22時(ラストオーダー20時)

イランカラプテ「こんにち」からはじめよう

「イランカラプテ」はアイヌ語で「こんにちわ」の意味です。「北海道のおもてなし」の言葉として広く定着させるため、民間企業、行政機関、学術機関等の連携によりキャンペーンが展開されました。鶴雅グループはサポーター企業として参加しております。

あなたから、北海道から。イランカラプテキャンペーン特設サイトを、是非ご覧ください。http://www.irankarapte.com

阿寒、道東のイメージをお酒で召し上がれ

まず、昨年誕生し瞬く間に人気となった「マリモヒート」。国指定天然記念物のマリモが沈む阿寒湖をイメージして作り上げたモヒートカクテルです。モヒートのミントとライムの爽やかさを活かし、青りんご味のクラッシュゼリーと球体のマリモを寒天で表現。澄んだ湖の中にかわいいマリモが浮かんでいるような見た目は、飲み口の爽やかさとともに女性に人気です。鶴雅ウイングスのバーでも味わえます。
さらにご当地ドリンクは他にも開発されています。まだちょっと寒いこの季節、心も身体もほっと温まる「あったまりもひ〜と」(阿寒湖・寒い季節限定)。
緑のマリモがきれいな「まりもハイボール」(釧路市)。摩周湖の神秘的な美しさをイメージした「摩周ハイボール」(弟子屈町)、そして世界三大夕日と言われる釧路の夕日にちなんだ「くしろ夕日ハイボール」(釧路市)。他にも現在開発中のものがいくつかあるとの情報も。
道東の自然が一杯のグラスに、ぎゅっと詰まっているような気がしませんか。
阿寒湖では商工会青年部が中心となって「阿寒湖ご当地ドリンク協議会」を立ち上げ、阿寒湖各施設、釧路市のPR団体、阿寒本町、弟子屈町の商工会青年部などと連携し、ご当地ドリンクの普及を目指して活動しています。今後の活動が楽しみですね。旅の途中で立ち寄った飲食店、宿泊施設で、ぜひメニューから探してみて下さい。そしてじっくり味わってみませんか?

  • くしろ夕日ハイボール
    世界三大夕日を映しこんだようなオレンジ色がきれい。

  • マリモヒート
    爽やかな口当たり、かわいいマリモゼリーは女性にも人気。

  • あったマリモヒート
    寒い季節限定で、今冬新登場のカクテル。じわじわ人気が出ています。

  • マリモハイボール
    緑の中にマリモがいます。阿寒湖の美しさを感じてください。

  • 摩周ハイボール
    神秘の湖・摩周湖をイメージした飲みやすいハイボール。

秘湖・秘沼をめぐる

北海道には、原生林の奥深くに、また人里離れて静かに存在する湖沼がいくつもあります。
時に来る者を拒み、時に包み込むように迎え、いくつもの美しい表情は魔法のように見る者の心を捉えます。
私たち人間とは違う時間の流れを刻んでいるかのように悠久の水をたたえ、空を樹々を鳥たちを映す水面は、私たちの心のキャンバスにどんな絵を描いてくれるのでしょう。

神仙沼

点在するニセコの湖沼群のなかで最も美しいと言われる神仙沼。

神仙沼(共和町)名称の由来は、ボーイスカウトの生みの親と言われる下田豊松氏がその美しさを「皆が神、仙人の住みたもう所」を表現したことから「神仙沼」と呼ばれるようになったと言われています。周囲は標高千メートルに近い場所にある高層湿原で、点在する湖沼群の中でも、最も大きく(周囲0.5km、最大水深は2m程)、そして最も神秘的で美しいと言われています。
神仙沼はその美しさを求めて訪れる人を迎え入れてくれる懐の深ささえ感じます。駐車場からの木道は、バリアフリーでだれもが気軽にトレッキングを楽しめるように整備されています。木道を進むこと20分。ダケカンバの森を抜けると視界が開け、神仙沼湿原が姿を現します。
周辺はチングルマをはじめとする高山植物、エゾカンゾウやワタスゲなどが咲き競い、「ニセコのお花畑」とも呼ばれています。また、神仙沼のシンボルとも言えるミツガシワが湖底から伸び、初夏には可憐な白い花が咲いて湿原を彩ります。小さな愛らしい花、生命を繋ぎ続ける植物たちの営みを、目をこらして見てみませんか?
神仙沼を目指すなら雪が溶けた6月がおすすめ、また秋の紅葉も見事でしょう。ニセコの空、湿原をわたり水面を揺らす風、ゆっくりと身を任せ、神仙沼を全身で感じてみましょう。しばしの時間、自然のささやきを聴いてみませんか?

取材協力・写真/ニセコリゾート観光協会
問い合わせ/株式会社 ニセコリゾート観光協会 / TEL 0136-44-2420 / http://www.niseko-ta.jp/

初夏のオコタンペ湖。特別保護区のため、一般の立ち入りは禁止。展望台から眺めることができます。

原生林に包まれた北海道三大秘湖のひとつ

オコタンペ湖(千歳市奥譚)恵庭岳の噴火で流れ出した溶岩によってせき止められた湖で、周囲が約5km、最大水深は20mほど。名称は、アイヌ語の「オ・コタン・ウン・ぺ」(川下に村があるの意)に由来しています。その昔、この湖を水源とするオコタンペ川が支笏湖に注ぐ辺りに温泉があり、かつてアイヌの人々の小さな村があったと言われています。現在は、支笏洞爺国立公園の特別保護地区内にあるため観光地化されておらず、晴れた日はコバルトブルーの湖水が原生林に映え、秋には紅葉を鏡のような湖面に映します。その美しさ、静かなたたずまいはオンネトー、東雲湖とともに北海道三大秘湖に数えられています。
オコタンペ湖には漁岳、小漁岳、恵庭岳から河川が流れ込んで扇状地を作っています。徐々に出来た扇状地ですが、オコタンペ湖ができた頃は、現在の面積よりおよそ3倍も大きかったのではないかと言われています。今この時間にも扇状地は堆積物で埋め立てられていて、いずれ遠い将来には無くなってしまうと考えられています。湖の姿を眺められるのは、展望台からのみ。しかも見ることができる夏場は樹木の葉枝が茂り、小さな湖がわずかに見えるだけ。エゾマツやトドマツの木々に守られているような孤高の湖を目に心に焼き付けてください。

取材協力・写真/一般財団法人 自然公園財団 支笏湖支部
問い合わせ/支笏湖ビジターセンター 千歳市支笏湖温泉番外地 / TEL 0123-55-2404 / 3月までは毎週火曜休館

緑したたる森の奥へと入っていくと、静かな水をたたえた幻想的な湖が目の前に現れます。

野生動物のゆりかご、植物の宝庫

チミケップ湖(津別町)オホーツクの秘湖と言われている「チミケップ湖」。アイヌ語で「山の水が崖を破って流れ落ちる所」という意味があります。約1万年前に谷がせき止められてできた湖と考えられており、阿寒湖と共にヒメマスの原産地となっています。
湖の辺り一帯は、およそ2千ヘクタールもの風致地区に指定されています。自然のままに保存されている天然林は、エゾマツ、イチイなど北海道を代表する樹、カラマツ、エンジュなどの落葉樹、ニレやシラカバなどが豊かな森を作り、その多様性が40種余りの野鳥と動物たちの生命の営みを守っています。
周囲が約7.5kmの湖の半分の湖岸をなぞるように野鳥観察舎、樹木園、キャンプ場、散策路が整備されています。森の息づかいを感じながら自然散策を楽しめるでしょう。散策道路はいくつかのコースがあり、見晴台からは眼下に静かに佇む森と湖を眺めることができます。また、湖の南岸の端から200mほど下流のチミケップ川では「鹿鳴の滝」が清々しい流れを聴かせてくれます。

取材協力・写真/津別町役場
問い合わせ/津別町観光協会 / TEL 0152-76-2151

濤沸湖は、川と海の水が入り混じり、海からの栄養も加わり、生き物にとって豊かな環境となっています。

謎のオホーツク人とアイヌ民族、融合する自然と文化

濤沸湖(網走市)濤沸湖は、海の作用で堆積した土砂により湖になっていった海跡湖で、海と川の両方の水が混じり合う汽水湖です。独特の自然はさまざまな生命をつむぎ出し、人の暮らしの営みの場ともなっていたようです。涛沸湖の近くからはアイヌの人々が暮らしたとされる遺跡が発見されています。
また少し離れた網走市内では海洋民族と見られる「オホーツク人」が暮らした痕跡が貝塚として発見されました。オホーツクの海は豊かな恵みの海だったのでしょう。
濤沸湖周辺には環境省や北海道が公表しているレッドリストにある動物が数多く生息しています。イトウ、ヒメマスなどの魚類、タンチョウやオジロワシ等の鳥類、それに植物や昆虫など。また涛沸湖で見られるオオワシ、オジロワシ、タンチョウなどは種の保存法により絶滅の恐れのある国内希少野生動植物89種(2013年6月現在)に指定されているのです。美しい景色、自然の豊かさを感じられるのは、貴重な動植物が湖を糧に懸命に生きているからでしょう。湖からの風はそう語りかけているのかも知れません。現在、濤沸湖ならではの魅力、恵みを次代に引き継いでいこうと漁業者や地域が一つになって濤沸湖の環境を守り続けるさまざまな取り組みが行われレいます。「ワイズユース」=「賢明な利用」の考えが脈々と受け継がれているのです。

取材協力・写真/濤沸湖水鳥・湿地センター
問い合わせ/涛沸湖水鳥・湿地センター 網走市字北浜203番地3地先 / TEL 0152-46-2400 / 月曜休館(祝日の場合は翌日)