株式会社イエローデータ 代表取締役 岡部 泉氏
株式会社イエローデータ
代表取締役 岡部 泉氏1955年生まれ。
多摩美術大学を卒業後、日本の工芸技術を新しい感覚でとらえた漆器、陶磁器、空間、家具、着物のデザインを手がける。現在は自社で、良質な日本の暮らし提案である生活ブランド「風流生活」を企画制作している。
また旅館や飲食店プランニング、ビジュアルデザイン、空間デザインをトータルに仔細にわたって行っている。
●2004年あかん鶴雅別荘「鄙の座」トータルディレクション・特殊意匠 デザイン。

魔法の杖をふるった人達阿寒湖がつくる天才的な芸術に魅せられながら

「阿寒、こころのふるさと」
 地方を旅してふと不思議に感じる事があります。それぞれの土地には、その土地にしかない独特の匂いがありますが、その中でも、すでに記憶にあったかのように懐かしいものがあります。まさに、阿寒を訪れた時にその懐かしい匂いを感じ取りました。
 その阿寒の土地で「あかん 鶴雅別荘 鄙の座」のお仕事をさせていただく事を喜びに思いました。しかし、喜びだけでなく大きな責任と自分の力の不足をも痛感致しました。十二月のオープン近くになっても、まだまだ残された仕事が山積みでした。毎日、客室の大きな窓から、阿寒湖の氷が墨絵のにじみを描くように、岸から徐々に凍ってゆく様を、自然というのは、なんと天才的芸術家なのだろうと感激している反面、心は焦るばかりでした。そんな私を、大西社長をはじめ、女将、鶴雅の皆様に励ましていただき、また、阿寒の素晴らしい手の仕事人の方々に助けていただき完成に至ったことを本当に有り難く、感謝しております。

 大西社長の適格な判断と宿に対する情熱、お客様の立場にたったホスピタリティの深さには、いつも感服しておりました。「鄙の座」は、阿寒の雄大な自然の懐に抱かれるように、皆様の「こころのふるさと」としてご利用いただけるようにと企画されました。温かさのある宿にとの大西社長の思いが、大きく育っていくことを願ってやみません。

 旅館とは、地域にあってその土地の方向性を大きく左右するものだと思います。いわば、地域のリーダー的存在なのです。あらためて風土とは単なる自然環境ではなく、人と人の関係が生み出す精神構造が大きな要素を持っていると感じます。

 阿寒を訪れた時に感じた懐かしい匂いは、温かな風土が招いてくれたふるさとの匂いでした。阿寒は、私の「こころのふるさと」になりました。これからも、阿寒の風土を大切に育てながら、地域が活性化されるような素晴らしい旅館づくりが展開されることを、心からお祈り申し上げます。阿寒のすべての風土に感謝を込めて。