財団法人 前田一歩園財団 理事長 前田三郎様
財団法人 前田一歩園財団
理事長 前田三郎様

祝辞・決断力と実行力をもってさらなる飛躍を

 この度、阿寒グランドホテルが阿寒湖畔に進出以来五十周年を迎えられた由、誠にお目出度いことと心からお祝い申し上げます。この好、不況の変化が激しい現代の経済・社会の中にあって自社を道内有数の観光ホテルに築き上げて五十周年になりますことは、先代社長大西正昭氏、現社長大西雅之氏をはじめ経営陣各位のご苦心ご努力はもとより職員・従業員一人ひとりの並々ならぬご苦労の賜ものと存じ深く敬意を表するものであります。

 二十年余り前、私どもの初代理事長前田光子氏が亡くなって直ぐ次の理事長として湖畔に参りました私は、土地の事情もよく分らぬまま光子氏の後継者として、主に土地所有者とか温泉の供給者といった立場で湖畔の皆様と親しくお付き合いをさせていただいております。先日、大西雅之社長にお会いした折「五十周年お目出度うございます。」と申したところ、同氏は「有難うございます。四十周年のときは、父(正昭氏)の業績を称えることを念頭に置いて企画しましたが、今回の五十周年は母(茂子さん)の苦労に感謝する気持を中心にしたいと思っております。」とのことで、私はなんと親孝行の息子なんだろうと改めて感心いたしました。

 私が阿寒湖畔に着任した年の夏、たしか八月頃であったと思いますが、グランドホテル社長の大西正昭氏から「理事長にお目に掛りごあいさつしたい」との連絡があり、日時を決めて、財団の山荘にてお会いすることに致しました。当日ご本人はキチンと背広を着て黒メガネをかけ、杖をつき、和装の茂子夫人を従えて、というよりも目が不自由のため奥さんに手を引かれて来られ、私と山荘の客間にてお会いしました。同氏によると、少し前に湖畔で開かれた町と観光協会主催による前田理事長の歓迎会に体調不良のため欠席したので改めてごあいさつに参りました、どうぞよろしくということでした。初対面でしたが実に堅々しく礼儀正しい方だナ、との印象を受けました。その後は同ホテル主催の改築記念行事とかクリスマスパーティーなどのときはいつも上席に案内され、鄭重なおもてなしを受け恐縮に存じております。

正昭氏の後を継いだ息子の雅之社長は、人間であるから長所も短所もあるでしょう。しかし不肖な私の拝見するところ、お世辞ではなくご両親の良いところばかり受け継いだ方のように思われます。ひと言で表わせば「気は優しくて力持ち」ではないかと存じます。これから先、世界はどんどん技術開発や新発見が進み、世の中がさらに変ってゆくと存じます。私は、大西雅之氏なら、持ち前の気配りの良さ、決断力と実行力をもってすれば十分に対処してゆけると信じております。大西雅之社長はじめ社員ご一同が今後とも茂子会長を中心にますます結束を固め、精進を深め、さらなる飛躍を続けられますことを心より、お祈りしてお祝いの言葉といたします。